琉球の城(グスク)にはなぜ聖域が存在するのか?本土出身の神主が聖域に君臨した琉球支配者の思想に迫る。
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| - | 2012.10.28 Sunday | - | - |
御嶽信仰は自然崇拝 ―斎場御嶽―
御嶽信仰は丘陵頂部をもっとも神聖視する信仰(=自然崇拝)であることを琉球開闢の九御嶽(『中山世鑑』)を例にご紹介するシリーズ。
今回は4つ目の御嶽、「斎場嶽」です。
(グスクの頂部聖域については、過去記事「グスク聖域の証明」シリーズ参照。)


「斎場嶽」とは、知念半島の東端に位置する斎場御嶽(せーふぁうたき)のことです。
斎場御嶽は世界遺産にも登録されているので、ご存知の方も多いことでしょう。

斎場御嶽は、首里王府が非常に重要視した御嶽で、神女の最高位である聞得大君(きこえおおきみ)の即位儀礼が執り行われた聖地でした。
聞得大君は他界のセヂ(霊力)を自分の身体に宿すことで神女となるのですが、そのセヂは、知念半島の東の海上の神の島「久高島」から発せられ、斎場御嶽に降りてくると観念されていました。

余談ですが、神女はしばしば「巫女(ふじょ)」とも記述されるため、本土人的には神社の巫女(みこ)さんのようなイメージを抱いてしまいがちですが、まったく性格が異なります。
人間を代表して神に取り次ぐ神主のようなものともまた違います。
他界のセヂ(霊力)を身体に宿した神女は神そのものであり、自身が崇拝の対象ともなっていたのです。
人が神の依代となる神事は本土でも珍しくはありませんが、近代に至るまで王府によって組織化・制度化されて存続した点に、沖縄の神女の独自性があると言えるでしょう。


さて、聞得大君の即位儀礼が行われた斎場御嶽ですが、ここもまた、岩山が聖地の核となっています。


s-P1790438.jpg
【自然が創り上げた巨岩のトンネル】


上の写真は斎場御嶽で最も有名な景観ですが、この三角トンネルを潜り抜けたところに三庫裡(サングーイ)と呼ばれる場所があり、現在はそこに3つの拝所が見られます。


s-P1790453.jpg
【トンネルから見た三庫裡】


3つというのは、トンネル側からみて左・右・正面の3ヶ所なのですが、この内、正面のものは比較的新しいものだと考えられているようです。

一方、左・右2つの拝所は、聞得大君の即位儀礼において重要な役割を担っていました


トンネルを潜って左にある拝所は、久高島からセヂ(霊力)を招くための遥拝所です。


s-P1790455.jpg
【久高島への遥拝所】


遥拝所なだけあって、眼前に神の島、久高島が見えます。


s-P1790462.jpg
【三庫裡から望む久高島】


この島から聞得大君に宿るセヂ(霊力)が斎場御嶽に飛んで来るわけです。
では、そのセヂは、いったい斎場御嶽のどこに降りてくるのか

それが実は、斎場御嶽で最も高い岩山の頂部であると考えられているのです。


その岩山は、三角トンネルの真上に当たります。
トンネルを抜けて右にある拝所は、岩上に飛来したセヂに、下まで降りてきてもらうためのものなのです。


s-P1790467.jpg
【右にある拝所 岩山の麓に香炉が備え付けられている】


s-P1790464.jpg
【拝所直上の絶壁 この上にセヂは飛来する】


斎場御嶽もまた、丘陵の頂部に特別な意味を持たされた御嶽であることは間違いないでしょう。



ところで、まったく話は変わりますが、世界遺産に登録されて以来、斎場御嶽を訪れる観光客が増え、そのマナーのあり方が問題になっているようです。
沖縄の人々にとって斎場御嶽は今もって神聖な場です。
観光客の存在が、沖縄人の神事の差支えになることがしばしばあるようなのです。

神社で例えると、神主が社殿で祝詞を奏上しているときにカメラ持った観光客が社殿をウロウロしているようなものですよね。
そりゃ、確かに、邪魔だ。(--;

先日の新聞で、「強制ではないが、沖縄の聖地は男子禁制であることをもっと知ってもらう必要がある」というような発言もありました。

おお・・・耳が痛い。。。

観光客を受け入れた時点で自ずと生じることは分かっていた問題で、解決策を見出すのもなかなか難しいですが、私自身は、敬虔な気持ちを持って調査させていただくことを忘れないようにしたいと思います。


しかしまあ、観光客のマナーもさることながら、メディアによる聖地の扱いも甚だ問題である気がしてなりません。
「沖縄のパワースポット♪」なんて銘打っておいて、最後の最後に「御嶽は神聖な場ですから・・・」なんて取って付けるふざけた番組も見かけます。
沖縄人自身が自分たちの聖地をどのように活かしたいのかという根本的な問題があるような気がします。



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| 御嶽 | 2011.05.13 Friday 11:50 | comments(6) | trackbacks(0) |
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| - | 2012.10.28 Sunday 11:50 | - | - |
コメント
パワースポット…だめか?
| 親友だったK | 2011/05/14 3:56 AM |
親友だったK

そもそも「だった」っけ?(笑)


>パワースポット…だめか?

個人で行く分には、観光地として開かれている御嶽もあるし、ダメだと言うつもりはないけれど、観光地化されていない御嶽までパワースポットとしてメディアが宣伝してしまうのはどうかと思うね、オレは。

「パワースポット」を求めるのは完全に個人的な欲求に拠るものだけど、御嶽って、地元の人たちの生活・文化に密着した聖地だからね。
よそ者が聖地を踏み荒らすことを快く思わない地元の人が多くいるというのは、沖縄ではよくある話で。
それが例え「神様を拝みに来ました」という理由であっても、地元の人たちにとっては「ここで祀られているのは我々の先祖だ。よそ者が拝むのは筋違い」となる。
こういう立場の人たちからしたら、「パワースポットを巡りに来ました」なんてのは論外だろう。

ただ、最近は、伝統的祭祀も廃れてきて、このまま皆に忘れ去られてしまうくらいなら、よその人でも御嶽を勉強に来て欲しいと願う人も増えてきている気がする。
それもまあ、地域や個人によっていろいろで、とにかく非常にデリケートな問題なんだよね。

こうした状況があるものだから、メディアとかが安易に「パワースポット」とか紹介するのは、非常に不敬な気がする。
| アラミタマ | 2011/05/14 3:48 PM |
沖縄出身ですが、とても勉強になりました。
| kenji | 2011/10/11 8:21 PM |
kenjiさん
コメントありがとうございます。
また覗いてやってください(^^
最近、更新が滞っていますが・・・
| アラミタマ | 2011/10/11 10:36 PM |
4月23日から27日の間、沖縄のグスクを回ってきました。40か所位回ったのですが、写真の整理をしながらグスクとななんがろうと思い始めました。ゆく前に貴殿のブログをしっかりみておけば、良かったと思っています。城址、墓所、拝所、神社いろいろですが、貴殿の意見を参考にまとめてみたいと思います。
| 坂本 充 | 2015/06/02 2:04 PM |
坂本充様

わざわざコメントを残してくださって、ありがとうございます!
とても嬉しいです。
ご返事が遅れてしまい、申し訳ありません。

たったそれだけの滞在期間で40ものグスクを巡るなんて、相当な強行軍だったことでしょう。
ただの観光ではないですね。

仰るように、グスクは様々な形態を持ちすぎて、その本質が非常につかみづらくなっております。
4月に行われた現地踏査で何かお気づきのことなどがあれば、是非ともご教示ください!
| アラミタマ | 2015/06/06 5:09 AM |
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